シブヤ領一さんのデザイン参考書「一生懸命デザインしたのにプロっぽくなりません。」の感想と考察。
2022年1月発行。
本のサブスクKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)で読みました。
デザインの考え方や良いデザインの作り方についてわかりやすく書かれています。
著者のシブヤさんと僕は年齢がかなり近いようで、共感できる部分が多かったです。
「はじめに」で書かれていましたが、20数年前はデザインについての有益な情報というのはなかなかありませんでした。イラストレーターやフォトショップのテクニックの参考書はありましたが、今のようにYouTubeやSNS、この本のようなデザインについての解説本はおそらくほとんどなかったと思います。
そういう意味でどちらかと言えばクローズドな世界でした。目の前の仕事をただひたすらにこなすしかなく、どうやったらデザインが上手くなるのか、方法論・考え方は現場ではなかなか学べませんでした。
会社の先輩ですらもしかすると感覚的に経験的にやっていた可能性も高いです。
そう考えると今はかなりデザインのノウハウはオープンになりました。
その恩恵を受けるべく、僕自身も近年さまざまなデザインの参考書を読んでいますが、「デザインのこと全然分かってなかった」という感想をいつも抱きます(笑)。それでも一応やってきたんだから、案外大丈夫なのか!?
この本はデザインの参考書としては、かなり幅の広い内容を取り扱っていると思います。
デザイン初心者はもちろん、ベテランの方も為になると思います。
デザインと言ってもグラフィックデザイン(印刷に関するデザイン)がメインの内容になっています。Webデザインについてはほぼ触れていませんのでその点はご注意ください。
デザイン参考書「一生懸命デザインしたのにプロっぽくなりません。」の内容についてざっくりと
デザインの基本やコツはもちろん、デザイン業界について、給料や労働環境、ポートフォリオの作り方、デザイナーになりたい方へのアドバイスなどなど、デザイナーにまつわるいろいろなことについて書かれています。
こんなに幅広く率直なことが書かれている参考書も珍しい。
デザインについて為になった部分
複数案を作る際に注意すること
ABCと3つの提案をする際に、B案・C案のサブ案が単なるバリエーションになりがち。
商品名を大きくレイアウトした案、写真をかっこよくトリミングした案、イラストを使った案、のような根拠ないバリエーション。
「ゴール設定」「トーン&マナー設計」をしっかり計画して切り口を大きく変えた案を作るのが良いとのこと。
例えば
- ターゲットの生活に起こる変化を表現
- 商品の機能を訴求魅力を伝える
- コミカルで親しみやすさのある
といった形で切り口を変えるとバリエーションとしての価値も高まりそうです。
良いデザイン(洗練された)に仕上げる5つのポイント
良いデザインに仕上げるコツも書かれていました。
- 余白を作る
- 文字を作る(ひと手間かける)
- ルールを作る(明度・彩度を統一する、特定の色は使わないなど)
- 意外性をつくる
- 不均衡を作る(整いすぎると面白みにかける)
忘れないようにこのブログに書いてまた見直そうと思います。
デザインが面白くない、つまらない そんな時は
デザインが面白くない、つまらない、と自分でも感じている時はアイデアが足りてないからかも知れません。
- デザインに伏線を張る
- 実は隠れた意味がある
良いロゴデザインを観察すると、多くの場合上記のようなポイントがあるように思います。
僕の場合は、考えすぎて訳がわからなくなることも多いですが 笑。
クリエイティブな人ほど、注意力が散漫という大学の研究結果も
これはデザインのノウハウと関係ないですが、ちょっと気になったので。
クリエイティブな人ほど、注意力が散漫という大学の研究結果があるそうです。
没頭、集中できないからと言って悲観的になる必要はないかも知れませんね。
提案するデザインは期待以上のものを
僕自身も心がけているつもりですが、提案するデザインは「おお!」と感動させられたら成功だと思っています。サプライズというか、予想以上のものを提案できれば最高ですよね。
実際にはそのような場面は少なめではありますが。
本書では「言う通りに作ってはいけない。予想通りだと物足りなくなる。期待以上のものを。」と書いていました。
また、「言う通りのものを作らないのも良くない。」とも書いていました。
クライアントが要望するデザインと、自身が良いと思って提案するデザイン、2パターン提出するのも良さそうです。(僕はだいたいこの2パターンで提案しています)
素人とプロのデザイナーの違いについて
素人とプロのデザイナーの違いについて書かれていました。
プロは「そこまでする?」をどこまでもやること。
具体的には
- 文字間の調整
- 錯視の調整
- グラデーションの調整(2色のグラデーションの場合、中央は濁った色になるのでそこを調整)
などなど。
それから、デザインが上手な人は「しつこさ」を持っていると書いていました。
これはやはりデザインが好きだからこその「こだわり」「しつこさ」になるんだろうな〜。
デザイン業界について
デザイン業界についてもデータをもとに書かれていました。こんなことあまり考えたことなかったなあ。面白い内容でした。
デザイナーの残業について
デザインの業界は20年前くらいだと、残業が多くて給料は安い、というブラックな業界と言っても過言でありませんでした。
僕の大学の同級生とも社会人になってそれぞれ仕事の状況を聞いたりもしましたが、大きな違いはなくて、「うーんこれはブラック!」と感じていました。
給料が安くてもやっていけたのは、現場のデザインを学びながらお金がもらえる嬉しさだったり、デザインが好きだからやっていけた、という部分が大きいと思います。
現在はデザイナーの労働環境は昔に比べると年々良くなっていると書いていました。
2019年に働き方改革もありましたし、残業は昔に比べて少なくなってそうですね。
デザイナーの給料について
給料についても実際の統計をもとに書かれていました。
ただ、ちょっと情報が古いので現在はどうなんでしょうね。(10年前くらいからの傾向が書かれていました)
年収は平均して400万円前後とのこと。
あくまで平均ですが、ちょっとがっかりするかも?しれません(苦笑)。
ちなみに、グラフィックデザインよりwebデザインの方が給料が良いという統計も記載されていました。
仕事の量としてもwebデザインの方が比重が大きいです。
これからデザイナーを目指す方はwebデザインの分野も視野に入れると良いかも。
デザイナーの未来
2009年から2016年の統計ではありますが、デザイン会社の従業員数は横ばいで、事業所は少なくってきています。
ただ、デザイナーの数は2005年~2015年の間では確実に増えてきているらしい。
フリーランスの方が増えてきた?のかも知れません。
統計を見る限りだと、どちらかというとそんなに明るくない感じはします ^^;
(あくまで相対的なものではありますが)
まとめ
他にもデザインのノウハウや、デザイナーにまつわる話が盛りだくさん書かれています。
読み物としても面白くおすすめの一冊です。
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